エビラ沢と言えば、神ノ川林道から見えるF1を思い浮かべると思うが、この沢の中流域には“白滝”といわれる落差20mほどの綺麗な滝がある。トップの写真がそれで、絹糸が岩肌を伝い落ちるような優美な滝である。何だか急に観たくなり、久しぶりに訪れてみることにした。
エビラ沢園地[7:20]…エビラ沢F1…右岸径路…エビラ沢…白滝[9:50]…奥の滝場12m滝[12:38]…ルンゼ登って敗退…戻って830mから北へ[14:50]…東海自然歩道[15:30]…風巻ノ頭[16:02]…エビラ沢左岸尾根(風巻ノ頭北尾根)…810mピークで径路見失う…686mピーク南鞍部からエビラ沢左岸へ…径路探す…エビラ沢500m徒渉点[16:54]…右岸径路…エビラ沢園地[18:19]/span>
本日の相棒は毎度お馴染み はっぴーさん。道すがらのエピソードは、はっぴーさんにお任せして、きょうは沢のこと中心に書きたいと思います。
たしか、エビラ沢を最後に遡行したのは7年前、そのときは、巻いて巻いてでも、ちゃんと袖平山まで詰めている。しかし、いろんな沢を歩き回っていると、沢の様子がこんがらがり、思いだそうとしても、断片的な記憶だけで、細かいことがでてこない。とにかく流程が長い沢で、大きな滝はF1と白滝、4、5mの滝が多く、越えられないような悪い滝はなかったという印象だ。
そんなわけで、前回の記録など読み返すこともなく、タカをくくって出掛けてみたが、ところがどっこい敗退するハメに。まあ、こんなこともありますわ。
公共交通機関利用者には不便なエビラ沢も、車利用者には便利で、車を止めてすぐ沢に入れるのがうれしい。支度をすませ、F1を見物したら出発だ。
一般に、 エビラ沢の滝と言えばこの滝を指すようで、落差は15mほどで 岩肌を滑り落ちる流麗な滝である。

エビラ沢F1の左手にある、右岸径路は、下部の木段が崩落してしまい、その存在を知らないと取付きが分かりづらい。左のルンゼを少し登り、かろうじて残っている木段に取り付けば径路が続き、F1落口に続くF2を上から眺めることができる。下からでは少ししか見えないF2も、上から覗いてみるとなかなか立派な滝である。
F1、F2は見物だけですませ、右岸に沿った径路をたどって最初の滝場を巻き、そのまま水平径路をいく。ここで沢に降りることもできるが、先にある二段の堰堤を越えるのが面倒なので、そのまま進み、堰堤を越えたあたりの広いところへ降りていく。
ここからしばらくは、やや単調なゴーロ歩きが続き、ようやく沢歩きの雰囲気がでてきたところで大岩がのっかったCS3m滝があらわれた。左の壁に残置スリングがぶら下がっていて、へつって越えられそうに見える。しかし、CSの大岩がかぶさり、ザックを背負ったままでは引っかかって抜けるのが難しそうだ。ここはやめて右手のザレにあったトラロープをつかみ、右の巻き道から越える。

すぐに、4m×7m(高さ×長さ)のナメ斜瀑が続き、そのまま4mの直瀑も越える。


沢幅いっぱいの二条5m滝。
真ん中にも流れがある三条の滝だった記憶があるのだが、
流れが変わったようで二条になっていた。
左から巻く。

そして白滝。
下段に2mの小滝をもち、黒光りの岩壁をなでるように伝い落ちる、絹糸を流したような優美な滝だ。F1も魅力的だが、沢を遡行しなければ見られない分、より魅力的な滝である。
しばらく休憩&観瀑タイム。じっくり鑑賞してから出発だ。
白滝の右の斜面に入り、ルンゼ状を20m登ったら落口方向のバンドを伝い落口の上流側に乗り越え沢に降りる。

分岐して流れる8m滝は、左の水流沿いが登れそうだが、なんだか滑りそうで、軟弱心が頭をもたげ右から巻く。あまり感心できる巻き道ではなかった。

その後も水遊びには快適な滝が続く。

これは下段トイ状、上段ナメ状の2段8m、水流突破。

そして険悪そうな、奥の滝場となる。
その入口となるのは、ゴツゴツの12m滝。トウシロウが取り付くような滝でないことは見てのとおり、かといって左右とも険しい壁で万事休すか。
巻いていくなら左のルンゼを5mほど登って、落口の左に抜ける草付きのバンドをたどるのだろうと思う。見た目には、そんな難しそうではないが、取付きから数メートルがもろく、イマイチ信用できない。前回は袖平山まで行ったので、この滝も越えたはず。直登するわけがないから、どこかを巻いているはずだが、どこを巻いたか全く思いだせない。

とりあえず、左のルンゼに入って登ってみた。どこかに高巻きルートがあるのではないかと思い登ったが、どんどん険悪になるだけだ。左の木のある小尾根に上がってみても、よかったのは最初だけで、ついにはガラガラの斜面になって登るのもままならない。最後は立った壁に突き当たり、あえなくギブアップ。

左の谷あいを覗いてみれば、ごっそり削ぎ落とされた極悪な大崩壊地、これを見たら完全に戦意喪失。ここは無茶する場面ではないので勇気ある撤退、尻尾を巻き巻き引き返すことに、これがホントの巻き道だ。チックショー


敗退決定、ここまで、あまりにのんびり来すぎて、袖平山まで行くなどとんでもない時間になってしまった。第一、目の前の滝が越えられないのだからどうしようもない。だからといって、今来た沢を戻るだけでは、オレのくだらない信念に反する。左岸側を登って尾根どおしに帰りたいが、どこも急峻で、まともに登れるところはないように見える。
地形図を確認すると、850m付近から南に登った尾根なら東海自然歩道まで近そうなのだが、そんな尾根があったかなといった印象だ。よく思いだしてみると、どうやら8m分岐瀑を巻いたときの斜面をそのまま登った尾根のようである。8m分岐瀑まで戻り、左岸に取り付いて登り始める。
最初は岩場まじりの急峻な斜面で、灌木や根っ子につかまって登っていく。傾斜もやや落ち、歩きやすくなってきたが、ここでポンコツ親爺の左足が悲鳴をあげだした。最近は、帰り道で決まって駄々をこねる困りもの。落ちていた枝を拾い、杖代わりにしてビッコひきひき、やっとの思いで東海自然歩道に合流した。
整備された登山道は歩きやすいが、痛い足を引きずりながらの歩みはのろい。きょうは呪いの一日だ。
呪縛はまだまだ解けなかった。
下山に使った風巻ノ頭から北に向かうエビラ沢左岸尾根、難しくはないのだが、径路をつないで歩くとなると留意する地点が何箇所かあるようだ。風巻ノ頭から北に下って北西に向きをかえ810ピークまでは順調だった。

ここからは明瞭な径路が続き、一旦東側に折り返し下りながら、途中で西に向かうトラバース径路に乗らなければならないのだが、その分岐を見逃した。下りすぎてから気がつき、トラバース径路を探したがみつからない。結局、本来の道ではない急斜面を強行トラバースして、向かうべき尾根筋に復帰した。
自分がいる位置は把握できているので遭難ではないが、やってる行動は遭難者と一緒である。
さらに呪縛は続く。
686ピークの手前からも、山腹を巻くような径路があるはずなのに入口がみつからない。注意力が散漫になっているのか、どこで見逃したのか分からない。しかたなく、地形図頼りに強行突破。斜面をトラバース気味に下降していくと、あるべき水平径路があらわれ乗ることができた。これで安心と言いたいところだがもう一箇所、見過ごしやすい分岐があるはず。もう、間違いは許されない。水平径路は歩きやすいので、調子に乗ると分岐を見逃してしまう。エビラ沢に下降するためには、途中から分岐して斜面を下っていく径路に乗り変えなければならない。日の長いこの季節なのでまだ明るいが、冬場だったらとっくに日が落ちている時間だ。ここを間違えたらホントに暗くなる。今度こそ見逃さないように集中して歩いていくと、右下に鋭角に折り返す径路をみつけた。位置的にここで間違いない。径路を外さないようにたどっていくと、朝、右岸径路を歩いてきて、降りた地点の左岸側に下降してきた。
ようやく呪いが解けたようで、二度あることが三度なくホッと一息。
ここまでくれば、もう大丈夫、エビラ沢を右岸に渡り、右岸径路を歩いていけばエビラ沢園地である。
何だかきょうは、祟られた一日になってしまった。
おそらく、エビラ沢は初めてだった はっぴーさんには、良い印象の残らない沢になったことでしょう。絶対忘れることはない印象だと思うけど(笑)
でも、オレは違うよ。
こんな納得できない沢歩きで、すごすご逃げ帰り、そのままおしまいにはしない。

2016.5.28(土)
《今回のルート図》
この記事へのコメント
M氏
呪いを解く際は
是非・・は氏・・と供に、是非お声がけをお願いします
イガイガ
は氏にはNG沢かもしれませんが、イ氏は全くのOK沢です。またまた行ってもいいと考えていますので、夏場の水浴びにでも…
は氏
ようやく長いトンネルから抜け出しUPしました。
エビラ沢自体はOK沢ですので、
ぜひ、あの滝こえて上まで行ってみたいです♪
あっ、レガーさんも白滝観たいとのことですので
トンチンカンで、よろしくお願いします。
次回はナース役かと思いましたが・・・(^^;
さすがイガイガさん、復活 おめでとうございます!
イガイガ
今度は、もう少しスマートにエスコートできると思いますが、なにしろ流程が長いので、気合い入れていかないとたどり着きませんよ。
どなたかが音頭取りしてくれたら、トン・チン・カン・プンでかまいません。