やどりき大橋から鍋割峠を越えて延々とやってきたのに、F1から続く屹立した連瀑をみたとたん怖気づき、臆病風に吹かれて逃げ帰ってしまった。情けないけどしょうがない、ここまで来ただけでもうくたくた、踏ん張る気力も体力もなし。きょうは下見とあきらめて、勇気ある撤退をきめこんだ。
トップ写真/イノスベリ沢F1
やどりき大橋[6:15]…越場沢[7:28]…鍋割峠[8:11]…越場沢(鍋割側)…尊仏ノ土平[9:13]…箒杉沢出合[9:23]…箒杉沢…イノスベリ沢(右俣沢)出合[10:36/10:55]…イノスベリ沢F1…左岸尾根[11:45]…竜ヶ馬場[13:20/13:30]…塔ノ岳[14:05]…鍋割山[15:12]…後沢乗越[15:52]…後沢径路…やどりき大橋[16:48]
意気込んでやってきたのに、メインの課題がなくなって単なる山歩きで終わってしまった。今回のブログ記事更新はやめようかと思ったのだが、次回のため記録として残しておくことにした。
朝の通勤渋滞をさけ、暗いうちに家を出て夜が明けきらないうちに やどりき大橋に着いた。見慣れた赤いやどりき大橋は工事用布に覆われ、橋梁塗装のさなかだった。したがって橋向こうには車が置けず、手前周辺の駐車も制限されている。工事が終わる12月28日までは、車の置き場に気をつかわねばならないようだ。
支度を終えたら6時15分出発、鍋割山への登山道をたどり、越場沢のガラ場を登って鍋割峠へ、ここまででおよそ2時間、峠北側の崩落地を下に降りて対岸へ渡り、最短ルートの越場沢を下って鍋割沢出合の荒涼としたガレ河原に降りる。資材運搬路を歩いて箒杉沢出合に着いたのはすでに3時間以上たった9時23分だ。
しかし、目的地はまだまだ遠く、写真中央に見える、竜ヶ馬場の左側あたりのヒダが多分そうだろう…

出合から広大な石河原の箒杉沢は、間仕切りしたような堰堤がどこまでも続き沢といっても沢遊びの対象とはならない沢だ。下流はどこでも歩け、堰堤越えも問題なし、堰堤工事のためのダンプ道もところどころに残っている。竜ヶ馬場沢の出合をすぎると石河原の箒杉沢も、いくらか沢の様相を呈してくる。現れる堰堤も年代が古く、越えるのにひと手間かかるものになってきた。荒れたダンプ道が右岸か左岸に迂回するように続いているので、素直にたどればよいのだが、疲れてくると余計なことをしてしまいがち。ちょっとの遠回りが面倒で堰堤のすぐ際を登ったら、どんどん上に追いやられ、結局最後はロープをだして下降するしまつ。余計なことして余計な遠回り、余計な体力も使ってしまった。
やどりき大橋から4時間以上休まず歩いて、ようやくイノスベリ沢に着いた。さすがにくたびれたので、少し休憩してから沢に入る。
出合の堰堤には「昭和59年度 右俣沢第一号コンクリート谷止」の銘板がある。たしかに西丹名称図や水源林配置図をみると右俣とあるのだが、どうみても支流にしか見えない。それにひとつ奥の沢を左俣としていて、そのくせ、さらにその奥の箒杉沢ノ頭に続く谷筋を本流としているのはどうにも納得がいかない。
ここは、丹澤山塊全圖や水源概念圖にある、“イノスベリ沢”の呼称を使わせてもらうことにする。漢字がらみでは“猪ノ滑リ沢”と書き、イノシシも滑る急な沢ってことなんでしょうきっと、こちらの方が現地を見ればしっくりくる。
堰堤を越えると奥にF1が落ちている。落差は8mぐらい。その奥は見えないが、滝が続いている気配は感じる。F1を越えるには、右手のザレを登って落口方向にトラバースすれば抜けられそうに見える。試みるが微量な傾斜で踏ん張りが効かず、つかまるものがないので慎重にならざるをえない。
F1に続く沢の様子を、もう少し登って眺めてみると思わず「スゲェ~」と声がでてしまうほど急峻な連瀑が続いている。下の写真ではまったく伝わらないが、突っ立った滝が何段にも重なって続いている。これをみたら戦意喪失、へなちょこレベルが安易に取り付ける滝場ではないようだ。

行きたい気持ち半分、怖いの半分・・・
血気盛んな頃ならナニクソで行ってしまうのだろうが、今は分別のある年代(ウソつけ)、ここで冷静になり考える。
無理すればF1は越えられるかもしれないが、その先がどうなっているか分からず、詰まって撤退となってしまった場合、滝の下降などもってのほかだ。たとえ運よく登れたとしても、稜線までは相当時間がかかり、確実に遅くなる。日の短いこの季節では、いくら歩きやすい登山道とはいえ、ヘッデンつけて暗い夜道は歩きたくない。
このまま引き返したとしても、おそらく、やどりき大橋に戻れるのは日没ギリギリの時間だろう。ここはやっぱり撤退するのが賢明と判断して、悔しいがあきらめることにした。
今度は万全を期し、悪童誘って再挑戦してみようと思う。
無い後ろ髪をひかれつつ、撤退といってもピストンは大キライ。今来た道をスゴスゴ引き返すなんてことありえない。沢遡行はあきらめたが、このままイノスベリ沢の左岸尾根を登って竜ヶ馬場にでることにした。
出合の堰堤横から尾根に取り付き、最初はケモノといっしょの四つん這い登り、木の根や岩角をつかんでの登りだが、沢に入っての連瀑登りに比べればヘのカッパだ。危なっかしいところが終われば斜度も落ち、あとは自然度の高い尾根筋を黙々と我慢の登りをこなしていく。しかし、こんな尾根でも、なんとなく踏跡を感じるのは径路マニアの病気かな?
疲れた体にムチ打ちながら、最後は笹を踏み分け、ようやく竜ヶ馬場で主脈登山道に合流した。
ヘロヘロとはいえ、ここまでくればひと安心、あとは踏み固められた登山道を歩くだけなので時間は読める。
現在の時間は13時30分、きょうの日の入り時刻は16時50分のはず、やどりき大橋までは遠いが、普通に歩いていけばギリギリセーフだろう。
休日にぎわう主脈線も、平日となれば行きかう人もまばらで余計な発声をしないですむのが偏屈男にはうれしい。塔ノ岳をすぎ、鍋割山稜に入ればもう人に会うこともない。鍋割山でも誰にも会わず、いつもの鍋割尾根1000m分岐をスルーして、きょうは後沢乗越までくだって後沢径路を使ってみることにした。登りでは何回か使っているが、たぶん下りで使うのは初めてかな、以前は荒れていて分かりにくい印象だったので使わなかったが、ここ最近、仕事道が整備しされ、ハッキリわかりやすくなっている。
個人的印象を言うならば、鍋割山からやどりき大橋に戻るときは、後半の薄暗い植林地歩きで意外と長い後沢の右岸尾根をくだるより、斜面の仕事道が分かりやすくなり、沢沿いも桟道が整備されて歩きやすい、後沢沿いの径路を歩くことをお薦めしたい。
やどりき大橋に帰ってきたのは、読みどおり暗くなるギリギリだった。
もし、あのときイノスベリ沢に入っていたら、日没アウトは間違いなし。半ベソかいて夜道を歩いていたことだろう。
やどりき大橋の橋梁塗装工事しかり、玄倉林道の車止め新設といい、塩水橋付近の通行止めといい、これから絶好の紅葉シーズンを迎えるというのに、車派の山遊び人いじめが止まらない。
2016.10.27(木)
《今回のルート図》
この記事へのコメント
ardbeg
塩水橋から日高越えの方が良くないですか?
イガイガ