県道70号を宮ヶ瀬から札掛方面に向かうと、塩水橋の少し手前にある小さな橋が「桶小屋橋」で沢名は「金山沢」となっている。しかし、ここは本来、桶小屋沢といわれる沢で、桶の側板のことをオケゴといい、その材料を切り出していたことからそう呼ばれたようだ。金山沢は、鉱山があった上流域のことをそう呼び、ちなみにその坑道口がある右岸の小沢はマブ窪という。マブとは坑道のことを意味する言葉である。
塩水橋[7:00]…桶小屋橋[7:04]…左岸から桶小屋沢へ[7:13]…最初の滝場[7:30]…右岸の枝沢に寄り道[8:35]…上の滝場[9:00]…マブ窪[9:27]…坑道跡[9:34]…本間ノ頭南東尾根[11:03]…タカノス沢左岸尾根から弁天沢性尾根…弁天沢出合左岸[11:55]…塩水林道…塩水橋[12:24]
実は、桶小屋沢を訪れるのは久しぶり、沢の様子などすっかり忘れてしまい、わずかに覚えているのは坑道口をのぞき込んだことぐらい、それさえアヤシイ記憶だ。
それだったら当時の記録なり、他のサイトなりを予習していけばいいのだが、そういう面倒なことはしないのが常、記憶がリセットされていたほうが、新たな気持ちで歩けるのがよい。
御託はこれぐらいにして、さっそく桶小屋沢に参りましょう。 塩水橋に車を置き、少し戻った桶小屋橋の左岸から径路に上がり、橋から見える最初の堰堤を越えて沢に降りていく。
ゴーロを進んでいくと沢は右に曲がり、その先には2mの小滝に続き石積の堰堤があらわれた。
堰堤を右岸から越えていくとケヤキ沢が左から入る。
そして第一の滝場となるスベリ台状のナメ滝がでてきた。
小滝が続き、左右の岸から流れ落ちる段瀑を見ながら、しばらく進んでいくと第二の滝場となる。
快適に登って滝場を抜けでると、トップに掲げた3mの吹き割り状の滝の場面になる。
本流は水流の細い方、左からの流れはマブ窪の湧水が金山沢にそそいでいるところだ。
左の写真は坑道口のあるマブ窪、三、四段になった20mのナメ滝となって出合っている。
ここは水流の左から登り、上にあがるとガレだらけで、これだけある水流はすぐにガレの下に消える。
あとは名前のとおりの水の流れのないガレ窪である。
坑道があるあたりまでいってみると、あるはずのところに見当たらない。
埋まってしまったということは聞いていたが、やっぱり本当だった。
下の写真、中央の枯葉の下あたりに坑道口があるのだが、完全に埋没している。
わずかな隙間からのぞいてみると確かに穴が空いているのは分かるが、人力ではとても掘り起こせない。
自然に埋まってしまったものかと思ったら、穴の入口に倒木を重ねて蓋にしているので、誰かが故意に埋めたようだ。さらに、今はその上に崩れた土砂が重なり、枯葉が目隠しとなって場所を知らなければ特定するのも難しい状況になっていた。
とりあえず現状が確認できたので納得。
このあと本流に戻って、最後まで詰めるつもりでいたが、やめてこのままマブ窪を詰めてみることにした。
水流があるのは最初の湧水の流れだけで、あとはガレ窪、ガラガラ音をたてながら登っていくと二俣状になり、どちらもすぐに行き詰りそうだ。登れなくなって四苦八苦する前に中間部の細木や根っ子が生えているところに逃げ、斜面を掻き登ってどうにか本間ノ頭南東尾根の肩付近にたどり着いた。
このまま、本間ノ頭南東尾根を下って塩水橋までいけば簡単なのだが、悪魔が囁きだし、南東尾根の稜線をまたいで弁天沢側に下降したい衝動にかられた。地形図をみるとかなり急峻にみえる。鷹ノ巣ガランなんて断崖も近くにあって、もし岩場に行き当たったら万事休すだ。でも、詰まったら戻ればいいや、まだ時間は早いしと、いつものとおりケセラセラで行ってみることにした。
南側の斜面に入ってみると、意外にも薄い踏跡がある。周辺の植林道かなと思いながら、呼ばれるままにたどっていくと道形になっている。これは間違いなく下降ルートが続いているぞと確信して尾根筋を下っていくと、とくに危険個所もなく、間違いそうな分岐もないまま弁天沢出合の左岸にピッタリたどりついた。
こんなところにこんないい仕事道があったとは…、知らなかった。
こういう秘密のルートを見つけると得した感じがしてうれしい。
塩水川を渡って塩水林道にあがれば、あとはのんびり周囲の景色を眺めながら、塩水橋に戻るだけである。
2017.4.25(火)
《今回のルート図》
この記事へのコメント
utayan
マブ=坑道!ためになります。難しい本を漁ることがないのでこういう情報があるとまた次の興味開拓につながります。まだまだ放浪&現地情報お願いします。
*ちょっと寄り道はなんでしょう?
イガイガ
山遊びも放浪も続けていますが、ブログは多少“間引き&手抜き”の気まぐれ記事になりそうです。
ゆるして
*気になった枝沢の様子を見に、途中まで入っただけですよ。