丹沢には、日陰沢の名をもつ沢が何カ所かあり、きょう訪れたのは神ノ川支流の日陰沢(日蔭沢)である。ガレに埋もれ、堰堤だらけで、遡行価値は見いだせないような沢だが、唯一ゴルジュがあり、そのF1までは昔行ったことがある。しかし、先の様子は未知のままで、もしかすると、小さな滝の一つや二つあるかもしれない。期待はしないが、行ってみないと分からない。F1の上部を確認がてら、日陰沢周辺の径路を探索してみることにした。
日陰沢橋[8:00]…犬越路への東海自然歩道…日陰沢F1[8:45]…F1落口目指してウロウロ[9:11]…F1落口[10:13]…ふたたび東海自然歩道[10:30]…950m山腹トラバース径路[10:42]…崩壊地多数クリア…大谷沢横断[11:55]…大岩沢通過[12:15]…日陰沢新道合流[12:28]…日陰沢新道…日陰沢左岸から日陰沢橋[13:10]
朝方、少し小雨が落ちていたが、じき晴れることを見込してゆっくり目に出発。昨年、神ノ川林道が土砂崩れで通行止めになって以来、久々の神ノ川流域の山遊びである。山側斜面が崩落した小瀬戸トンネル入口付近は、土石防護の鉄壁ができていて、道路幅が狭くなっていたが、車の通行に支障はない。平石沢出合の大量に押し出された土石は片づけられ、多少凸凹は残っているが、スピードを落とせば問題ない。これでまた、神ノ川周辺の山遊びが再開できるのがうれしい。しかし、昨年は常時開放されていた日陰沢橋の林道ゲートが、また閉ざされていたのはちょっと残念である。
日陰沢橋に車を置き、神ノ川ヒュッテの横を通り抜けて東海自然歩道を犬越路方面に向かう。日陰沢を右手に見ながら進み、大谷沢出合をすぎると、やがて林道も終わって山道となる。トレランのコースということもあり、整備され踏み固められた道は、以前に比べずいぶん歩きやすくなった。木橋で左岸に渡り、植林の中を折り返しながら登って、ふたたび沢沿いになり、横切るように沢を渡る鉄の橋があるところが、ゴルジュの入口となる。50mほど中に入ると二俣になり、左の本流にすすめばすぐF1に出合う。
日陰沢F1、二段15m

垂直に流れ落ちる部分が8m、傾斜角が落ちて2m、テラスを挟んで上段5mといったところか。 周りは岩壁に囲まれていて、日陰の岩はヌメってとても登る気になれない。危険は冒さず、登山道に戻って迂回路を探すついでに、右俣を覗いてみると、二段5mの滝があり、上に葉狭い廊下が続いていた。
こちらも厳しい。

いったん登山道に戻り、巻き道探してウロウロ、あとから思うとずいぶん無駄な動きをしてしまったが、立木につかまりながら、なんとかF1落口に降りることができた。
自称落口ハンターの面目躍如、やっとこ落口へ。


大きそうに見えるがそれほど迫力はない。
最上段はゴツゴツの3m。

そして石積堰堤の登場。
左から越えていくと、その先にも古い石積堰堤がハードルのように続いていた。

ひとつずつ越えていくのが面倒なので右岸に上がると、なんとそこは登山道…
な~んだ、落口見たさに、斜面を下ったり登ったりしたのがバカみたい。最初の石積堰堤のところから沢に降りて下れば簡単だった。
きょうの目的は一応達成した。すぐに引き返すのはもったいないし犬越路までいってもなぁ~
大室山は先週登ったばかりだし…
ということで、950m付近で登山道から分岐して山腹をトラバースする水平径路をたどることにした。ハイカーが間違って迷い込まないよう張られたロープを跨ぎ径路に入ると、最初は登山道よりもいい道が続く。だが調子に乗っていると第一の関門、地すべり斜面むき出しのガレ場通過となった。ここはトラロープがあり、ケモノたちの通り道もあるので、つかまりながらトラバースして通過、しかし陽が当たらず老朽化した桟道や木橋は、今にも踏み抜きそうで怖い。そっと渡って越えていく。

プチ難所は数々あれど、一番難儀したのが999mの標高点付近を横切る手前にある崩壊斜面だ。山抜けして植林ごと抜け落ちた崩落斜面で、一応古いトラロープはあるが、どの程度信用してよいものか…、切れてつなぎ直した箇所もあり、いつまた切れてもおかしくない状況だ。足元のザレも崩れやすく、一度滑りだしたらそのまま谷底に呑みこまれそうだ。慎重に、慎重に…、カモシカになったつもりで崩壊地を横断し、なんとか無事に渡りきった。

しかし、緊張の中見た、この崩壊地からの景色がきょう一番の眺めなんだから笑ってしまう。植林がなくなり視界が広がったようだ。
一番奥の尖がりは丹沢の主峰蛭ヶ岳、対岸は大笄の尾根の山腹で、神ノ川林道が横切るようにとおっているのがわかる。

崩壊地をすぎ、999m標高点の尾根を回り込み、大谷沢まではとくに問題になるところはなく、大谷沢の連瀑帯が終わってゴーロになったあたりで沢を横断する。腐りかけの木ハシゴで沢に降り、対岸に続く径路を歩くのだが、取付きが濁流に削られ分かりづらくなった。しかし、何度か歩いているので迷うことはない。
大谷沢以降の径路は今までより歩きやすいが、二箇所に径路の分岐があり、登り気味に続く道をたどる。大岩沢の通過地点は、径路が崩落しているが、ルートを見極めれば大丈夫。ここを通りすぎ、植林の中の水平作業道をたどっていけば、いつの間にか日陰沢新道に合流する。
日陰沢新道を少し登って、旧日陰沢新道で黒岩までいくことも考えたが、ここまでの緊張感で、すでにお腹いっぱい。距離にすれば物足りない短い周回だったが、きょうはここで切り上げ、早帰りと決めた。
日陰沢橋に着き、着替えて帰路についたのが1時半、
これなら懐かしのフレーズ、“3時にビール”に間に合いそうである。
2017.5.27(土)
《今回のルート図》
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