6/27 水無川本谷

どこの沢へいくか、前々から計画を立てるなんてことはまずしない。だいたいが前日に気象情報をみて判断、行き先は朝起きたとき浮かんだイメージやそのときの気分で決めている。カッコよくいえば勝手気ままだが、そんなイイ加減な山遊びスタイルが誉められるわけもなく、そろそろ歳に似合った遊び方をしようかとも思うのだがやっぱりムリ。長年続けてきた山スタイルは簡単に変えられない。結局、きょうも朝起きて浮かんだ印象を尊重し水無川本谷を訪れることにした。なぜかはわからないが、おそらく何度も訪れた沢は季節、季節のイメージが脳裏にこびりついていて、その日の天候や季節感が条件反射となって情景が浮かび行きたくなるのではないかと思う。

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「ザックよ~し」👉
先週の轍を踏まないよう、きょうはしっかり指差し確認をしてから家を出た。
秦野戸川公園をまたぐ風の吊橋下の道路には、路上駐車をさせない魂胆みえみえの意地悪歩道が施工されていた。ここがダメなら奥の戸川林道にはみだし、狭いところに無理やり駐車するにきまってる。相変わらず行政のやることはその場しのぎだな、なんて悪態をつきながらダートの戸川林道へと突入した。
雨上がりの戸川林道は、当然ぬかるみ水溜りは当たり前、予期せぬ段差や凸凹も茶飯事だ。洗ったばかりの車でここを走るのは気が引けるがしょうがない。なるべく汚れないようゆっくり走ったつもりだったが無駄、戸沢出合の河原に着いたときには白の車がダルメシアンになっていた。

新型コロナ自粛の解除をうけてか、朝早くからけっこう車が停まっている。支度をすませ出発、本谷第一号堰堤を左から越えたら遡行開始。昨年5月のときとくらべゴーロが少し動いたように思うのだが気のせいか… 20分ほど歩くと水無川本谷F1がみえてきた。
きょうのF1は三条の流れに変身していた。左から滝上に登って確認してみると、右のセドノ沢側の落口に詰まっていた岩が流され、一本だった右の流れが二本になったようだ。
滝好きにとっては嬉しいね

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F2
水流の左の薄暗い岩陰に古い鎖と濡れたロープがあるのだが、ヌメっているうえしぶきも浴びるし、どう考えても右の乾いた岩壁をよじったほうが簡単そうにみえる。でも、左に鎖があるということは、以前はそこがルートだったのだろうか。
家に帰ってから古い資料を調べてみた。昭和19年の塚本閤治著「丹沢山塊」にF1とF2の写真が載っていた。F2をみると現在の水流はほとんどなくチョロチョロ、本筋の流れは下の写真の右壁、少し濡れてコケがないあたりだったことがわかった。なるほど、当時は左壁の方が乾いていたので登りやすかったのだろう。
ついでにF1をみると印象がずいぶん違う。水の流れは二本だが岩肌がのっぺりしていて全体にスッキリ、今のゴツゴツした感じがない。70年以上の年月が沢の様相を変化させたことがよく分かる。

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行く手を阻むF3
少し手前の左のスラブ岩壁に垂れている残置ロープをよじ登り鎖につかまって落口方向にトラバースするのだが、出だし数歩の足場が定まらず滑り落ちそうでイヤらしい。

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F4がどれだか分からずスルーして迫力あるF5。
右壁の斜上するバンドにあった鎖は撤去されているのでここは登れない。手前から右手にあるトラロープを伝って左岸の踏跡をたどり、落口の右上に抜けていく。

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F5を越えるとひと休みポイント。ここで表尾根につづく荒れた書策新道が横切る。
渋谷書策さんが亡くなってだいぶたち、書策小屋も片づけられた今も書策新道はなんかヘンだが、鉱山道を修復して道をつけた功績をたたえて名を残したってことかな。

さらに沢を進んで沖ノ源次郎沢を左に見送り、続いて木ノ又大日沢を正面にみて左に曲がるとF6だ。ここは右岸の巻き道を使って越える。

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この辺も少し渓相が変わっていた。
右上にひっかかった大岩が今にも落ちてきそうで通るのが怖い。

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ゴーロの岩が流されスッキリ。
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金冷シ沢との二俣もサッパリスッキリ。
しかし、右の本流に入ると左岸が大きく地滑りしていて沢の中は大荒れ。大岩や倒木を乗り越えていく。

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F8大滝
標高があがるにつれガスがたちこめ
滝下から見上げても上部が霞んでみえない。

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巻きながら観る大滝全貌、やっぱり高い。
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F8を正面に、右手のガレガレルンゼを20mほど登るとくたびれたロープがあらわれる。これを伝っていけば大滝の上流側で沢に降りられるのだが、一部中身むき出しで芯一本、命を預けるには心許ないところもある。しかし、これがあるのとないのでは大違い。今度訪れるときは拾ったロープでも持参して修繕しようかと思うのだが、その前に事故が起きたら大変だ。
これから本谷遡行を考えている貴兄、余分なロープがあったら途中の3mほどの補修、よろしくお願いします。

大滝を巻き終わり沢に戻ったら、行けるところまで沢筋を詰め、ガレだらけの沢歩きに飽きたところで踏跡をたどって塔ノ岳直登の左の尾根に乗る。この尾根、雰囲気がよいので好きだが、塔ノ岳山頂の直下はトゲトゲのきついジャケツイバラが繁茂していてヤブ漕ぎ不能のブッシュ。今まで何度か山頂広場に直接でようと試みたがいつも挫折、無理やり抜けようとしても衣服にまとわりつき手指は血だらけで抜けだせない。今度こそはと思ったが今回もあえなく敗退、表尾根側の登山道に逃げだした。2~3分登れば山頂なので無理することはないんだけどね。

塔ノ岳はしょっちゅう来ているので一息ついたら下山、さあて帰り道はどうしようか…
近いところで表尾根からホソノノ尾根や書策新道、定番の政次郎尾根やもう少し頑張って烏尾山仲尾根もある。大倉尾根はあまり歩きたくないが源次郎尾根やもう少し下った天神尾根もある。
で、けっきょくどうしたか…
絶え間なく登ってくるハイカーを尻目に、なぜか歩きたくなかった大倉尾根へ。花立まで駆け下ったら源次郎尾根の笹っ原に逃げ込み、あとはのんびりガスに煙った源次郎尾根をくだって昼過ぎには戸沢出合に戻ってきた。
もちろん、本日は余裕の3時にビールとなったのはいうまでもない

あ、そうそう忘れてた。
きょうのステルス戦隊との戦いのようすはというと、巻き道の途中で取り付いたらしいヤツが数匹、途中こっそりズボンを這い上がってきた一匹、戻ってからのチェックでみつけた5、6匹。集中砲火というほどではなかったがやはり安心はできない。
対策を忘れず、くれぐれもご油断めされるな!

 2020.6.27(土)

戸沢出合[6:26]…水無川本谷…F1[6:58]…F5[7:54]…F8大滝[9:15]…塔ノ岳[10:50]…大倉尾根…花立から源次郎尾根[11:10]…戸沢出合[12:20]

《今回のルート図》

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