“谷太郞川 三峰山 宝尾根 鳥屋待沢”

タイトルにした4つのワードは、ある遭難者が家族に書き残した行き先のメモである。
これだけでどういうルートをたどったか推測するのは、山に興味のない人には難しいかもしれないが、ある程度丹沢を歩き回っている人なら、だいたいの地域やルートは見当が付くのではないだろうか。
もう少し補足すれば、出発の起点は谷太郞林道終点の駐車スペース、そして鳥屋待沢の秘境"幕岩"直下で多数の遺留品が見つかったことである。

これらを踏まえて、遭難された方が歩いたと思われるルートを推測してみると主にふたつ。
ひとつは谷太郞川沿いを上流に進み、不動尻から三峰山に登るルート。
もうひとつは、大小屋沢右岸の境界尾根を三峰山に上がる最短だが急峻な尾根ルート、
勝手な推測なので理由を問われると困るが、個人的にはここは歩いていないように思う。
もちろん、林道を戻って宝尾根から取り付くか、鳥屋待沢を遡行することも考えられるが、
メモに残る地名の順番から登りのルートに使ったとは考えにくいので除外である。

というわけで、おそらく一つ目のルートを歩いた可能性が高く、三峰山に登ったあと下山路を宝尾根に取って、途中777ピークから幕岩に立ち寄ろうとして誤って遭難されたのではないだろうか。
勝手な考察ではあるが、概ね間違ってはいないように思う。
遭難者の方と面識があったわけではないのだが、ご家族と少々縁ができたことで思うことがあり、
今回、慰霊と検証を兼ね、歩かれたと思われるルートをたどってみることにした。

谷太郞林道終点に車を置いて出発、谷太郞川から名を谷太郞沢と変えた沢の上流に向かう
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沢沿いの道は厚木市のハイキングコースにもなっているので整備はされていて歩きやすい
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30分ほど歩くと、一ノ橋で七沢から続く二ノ足林道と合流
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厚木市が観光化をめざす不動尻のミツマタ群落も見頃はすでに終了
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唐沢峠を経由する大山への登山路を左に分け、脅し文句の立て札を尻目に三峰山登山道へ
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ちょっとした鎖場もある沢沿いのルートだが脅しほどの危険はない
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不動尻から1時間ほどで稜線に上がれば三峰山はすぐそこ
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猫の額の三峰山の山頂に着いた
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△934.6三角点標柱は根元剥きだし、山頂が磨り減って低くなった?
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七沢山まで戻り宝尾根の核心部ヤセ岩尾根を777ピーク目指して下降
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ミツバツツジの季節がやってきた
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途中の崩壊地あたりから観る777ピーク
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777ピークに着いた。
ここで少し、遭難時の状況について考察してみることにする。
いわゆる宝尾根の尾根道方向はゆるやかで間違えるようなところではなく、
鳥屋待沢に延びる北の尾根に迷い込むのはまず考えにくい。
明らかな下降の意思がないと北側には入らないと思う。

2週間前、鳥屋待沢を遡行して、幕岩から777ピークを目指して直登したが、
下部はザレ場の急斜面、途中から木の根や灌木をつかんでの4足歩行、
尾根と呼ぶのもおこがましい急傾斜の小尾根を非常に神経を使って登った。
一度歩いたので、いくらか状況が分かっているとはいえ、
登りと下りでは同じ尾根でも見え方が違う。
下りではどう見えるのか、尾根を下降して検証してみることにした。

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777ピークから北へ向かって下降開始、
急な尾根ではあるが、バリエーション歩きの場数を踏んでいれば十分歩ける尾根である。
ただし、上を目指すだけの登りのときとは違い地形図には表れない枝尾根があるので、
間違えて下降してしまうと命取りになりかねない。
しっかり読図して下降を続けると、やがて沢の音が聞こえ鳥屋待沢が見えてきた。

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しかし、まだ油断はできない。
最終的に崖の上に立って降りられなくなってしまってはオロオロものだ。
最悪、登り返すことも念頭に下降を続けると、
無事、ロープの世話になることもなく軟着陸することができた。
降りた場所は、鳥屋待沢右俣の分岐を下った5m滝のさらに下流100m地点、
立木に赤ペンキマークのあるところだった。

今回はたまたま、一番安全に下降できるルートをたどれたので問題なく降りられたが、
もし地図アプリ等に幕岩の位置を入力して下降したらどうなったであろう。
自分はそういう歩き方はしないが、示す方向を信じて進めば、
行ってはいけない危険な枝尾根に引き込まれる可能性もある。
周囲の状況を判断せず、そのまま行けると信じて下降を続ければ、
いつのまにか行き詰まって、身動きがとれなくなってしまうかもしれない。
そんなときに慌てて行動すれば、ロクなことにならないのは身をもって経験している。
遭難された方がどういう行動をとったのか、今となっては分からないが、
幕岩に直接降りようと無理をして、最悪の結果になってしまったのではないだろうか…


さて、無事に沢まで降りられたのはいいけれど、ここからどうしようかな...
登り返すのもちょっとつらいしなぁ…
きょうは沢歩きのつもりはなかったので沢支度はしてこなかった。
沢靴を履かずに沢を下るのは感心できないのは十分承知しているが、
幸い、この沢の状況は把握している。
ここから、下流のゴルジュの滝の手前までならトレッキングシューズでも歩いて行ける。
茶色の苔を踏まないよう、なるべく乾いた岩を選んで注意しながらゴルジュの手前までやって来た。

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このままノホホンと進んでいくと滝となり、その先は狭いゴルジュで通過不能。
右岸は立った岩壁なのでお手上げだ。
左岸は小沢が流れ込み、その左岸側は本流滝下で左に曲がるゴルジュと
隣り合わせの中間尾根になるので、ここを乗り越せば本流に戻れそうである。

小沢の合流地点から左岸に取り付き、中間尾根を乗り越えロープで確保しながら下降、
本流のゴルジュ入口付近に降りてひと安心である。
ここまで来れば、大滝上の連瀑帯と15m大滝を左下に眺めながら、
右岸の斜面をトラバースして大滝下に下降、もう大丈夫だ。

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のんびり歩いて鳥屋待沢沿いに続く径路をたどり、谷太郞林道まで降りてきた。
あとは20分ほどの林道歩きで駐車地にもどれば、本日の山遊びも無事終了である。

ウダウダと長くなってしまったが、
くれぐれも山遊びの鉄則 “楽しく登って無事に帰る” を忘れずに!

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分かってますよ言われなくても。
オマエが一番気をつけろってネ😅

2023.4.4(火)
谷太郞林道終点【6:37】…谷太郞沢沿い径路…一ノ橋で二ノ足林道に合流【7:07】…不動尻【7:17】…三峰山登山道…七沢山【8:37】…三峰山(本峰)【8:55】…七沢山【9:12】…宝尾根…777峰【9:47】…777北尾根下降…鳥屋待沢着地【10:25】…沢沿いを巻きながら鳥屋待沢下降…15m大滝【11:30】…権現橋【12:16】…谷太郞林道…谷太郞林道終点【12:36】

《今回のルート図》

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