初っ端から予定がくるい、滝を巡る気力が失せて断念してしまった。
今回は少しルートを変え、あらためて五つの滝を巡ってみることにした。
手始めは藤木川上流の白雲の滝、つばきライン天照山バス停の奥に車を停め、
山腹の天照山神社を目指して10分ほど山道をくだっていくと、
淡いベールを垂らしたような優美な流れの白雲の滝があらわれた。
落差は20mほど、天照山神社の御神体なのだろうか、どこか神秘さを感じる滝だ。
さらに下流に下ったところに、去来の滝と名のついた滝があるのだが、
こちらはいわゆる渓流瀑で、あまり魅力を感じない。
今回はパスして次の目的地、新崎川上流域の滝を目指すことにした。
天照山バス停まで戻り、つばきラインをのんびり土肥の大杉入口へ向かう。
平日の早朝なので車の往来はほとんどなく、相模湾の景色など楽しみながら歩いていく。
つばきラインを離れ、頼朝の伝承が残る土肥の大杉跡の碑があるあたりまでは順調だった。
しかし、その後は漫然と歩いていたせいか、いつのまにか道を外していたようだ。
気がつき引き返して復帰したが、このルート初めてではないし、
特段苦労した記憶もないハイキングコースなのに、なんかおかしい。
だんだんと藪が濃くなり、道が消えて行き先がはっきりしなくなった。
地図を確認しても、方角は間違っていないし、ルートも大きく外していない。
ここはコンパスを信じて進んでいくしかないが、何度も激藪にじゃまされ、
右往左往しているうち、とつぜん、藪から棒ならぬ藪から道標があらわれた。
これが立っているので、間違っていないことは確信できたが、
示す方向はどちらも激藪、全く先は見えず5mと進めない。
何度探っても、藪に行く手を阻まれるが、
この状況を打開するには、強行突破するしか手はなさそうである。
覚悟を決め、笹を掻き分け無理矢理踏み込んでいく。
道はあるはずと信じ、足もとを見ながら掻き進んでいくが、やはり判然としない。
なんとなく道を感じるところもあるのだが、反発する笹の抵抗が強くて思うように進めず、
厄介なイバラがまとわりついてくるので、もう泣きそうである。
激藪の中を小一時間ほど、悪戦苦闘の平泳ぎを続けていると、
ようやく沢の音が近くで聞こえるようになり、
やっとの思いで新崎川上流の土肥大杉沢左岸に抜け出ることができた。
ここまでくればもう大丈夫、あとは沢沿いをたどり、
支流の中尾沢沿いを15分ほど登って行くと、正面に落差のある滝が見えてきた。
遠くに見えた滝がこれ。中尾沢左俣の紫音の滝と名付けられた滝だ。
ふだんはチョロチョロの流れながら、きょうは昨日の雨のおかげか、けっこう水量がある。
ゴツゴツの岩肌を、三、四段になって伝い落ち、正確な高さは分からないが、
おそらく最上段まで50~60mあるのではないかと思う。
さらに右手には、岩肌を分岐しながら流れ落ち、滝下に虹を架ける、
中尾沢のF1が姿を見せた。
前衛となるF1の上に、六方の滝と名付けられた柱状節理のF2がある。
F1の流れ右岸(左手)を回り込み、フィックスされたロープでルンゼを登ればご対面。
落差は15mぐらいだろうか、六角柱を縦に並べたような見事な柱状節理だ。
せっかくなので落口も見物していくことにした。
右岸側から巻いていくと踏跡もあり、危なっかしい崖の縁のトラバースも
ロープが設置されいるので安心だ。
落口を覗こうと思ったが、岩がぬめっていそうなので近づかず見るだけ。
石垣を横にしたような沢床は、柱状節理の断面部がみえているのだろう。
中尾沢の三つの滝を見たところで、次は、尾根ひとつ東に越えた深沢にある清水の滝へ向かう。
六方の滝左岸の尾根を越えていくことも考えたが、
先ほどのヤブコギで体力の余力なし、おとなしく沢伝いにいくことにした。
いったん土肥大杉沢に戻り、白銀橋方面に向かった木橋のある沢が深沢である。
沢の中も歩けるが、沢装備をしていないので、左岸に残る径路をたどっていく。
しばらくいくと沢は二俣になり、左の沢に少し入っていくと
さらに右手から水の流れがあらわれた。
近くにワサビ田もあり、ここが清水の滝で間違いない。
狭い谷間を幾段にもなって流れ落ちているようだが、
全容は見えず、見えるのは下段とその上の少しだけ。
全体を滝と見れば落差はかなりありそうだが、
急勾配の狭い谷間を流れ落ちる滝といった印象だ。
ワサビ田跡
今回はめげずに、予定どおり滝を巡ってこれた。
あとは、車を置いてきた天照山まで、のんびり戻るだけである。
本流に戻り、白銀林道まで降りてきた。
ここからは長い林道歩きになるが、真面目に椿台までいってしまうと、
そこからの、つばきラインの車道歩きがつらそうだ。
そこで、ショートカットルートを探してみた。
地形図を見ると、白銀橋から鵐ノ窟入口に至る中間地点あたりに、
つばきラインに抜けられそうな破線道が記されている。
しかし、地形図の地形についてはともかくも、破線道についての信頼性はうすい。
お世話になっている国土地理院には申し訳ないが、昔のままのデータがアップデートされておらず、
新版になっても、消えた廃道や付け替えられた道がそのまま残っていることも多い。
信じて入って何度泣かされたことか...
まぁ、廃道マニアにとっては、それもまたうれしいけどね。
さて、この破線道はどうだろうか、入り口を見のがさないよう、
気に掛けながら歩いていたのだが案の定、気づかずにスルー、
引き返し確認しても道らしいものはなく、林業系のピンクテープも見当たらない。
またハズレかなと思いながら、とりあえず踏み込んでみると、
うっすら踏跡が現れたが、とても道とは呼べない。
それでも地形図上の破線を外さないよう進んでみると、
なんとなくそれらしい道形がでてきた。
道幅は2mぐらいあるが、最近使われている形跡はない。
それでも歩くには十分、ヤブコギに比べれば雲泥の差だ。
たどっていくと県道を走る車の音も近くなってきた。
そしてひょっこり、つばきラインに飛び出し、ミッション•コンプリート!
ここまで来れば車は近い。
単なる整備された登山道歩きじゃ燃えないけど、好きな滝巡りにヤブコギのオプションが付いて、
未踏のルート探索のオマケまで付くと、やっぱり燃えるねぇ~
おかげで、いつになく字数がふえちゃったよ。
2024.3.27(水)
天照山[6:40]…白雲の滝[6:50]…戻ってつばきライン[7:25]…土肥の大杉入口[8:00]…土肥の大杉[8:10]…激藪悪戦苦闘…新崎川上流左岸へ[10:00]…中尾沢[10:23]…紫音の滝[10:37]…六方の滝 観瀑[10:45]…落口のぞき[11:06]…戻って深沢[11:42]…清水の滝[12:30]…戻って白銀林道[13:23]…つばきラインへショートカット[14:09]…つばきライン[14:48]…天照山[15:05]
《今回のルート図》
この記事へのコメント
olddiver
イガイガさんが清水滝と言っているのは、多分右股の2段に滝で、清水滝は左股へ入った所の左岸に落ちている、幅広の落差が30mに近い滝です。六法の滝の様な六角の摂理岩状を流れる滝とは違って、四角形(岩っぽい)の岩壁を流れ落ちています。やはり全容(特に上部)は見えにくいです。
地形図から見ると、イガイガさんの言う右股の滝は、さらにその上に大きな滝があるように思えます。一度確認しなければと思っていますが、いまだに実現してません。
それとこの辺りの地形図に記された破線経路はほとんど当てになりません。
イガイガ
印象が違ったように思ったので間違いましたかね。
今度は沢支度して、周辺を探ってみようと思います。
ネタの提供、ありがとうございます。